不整脈センター

ごあいさつ


天陽会中央病院は、創立以来鹿児島県内の循環器医療の分野において中核を担ってきました。この度、循環器分野の更なる発展のため、新たに不整脈センターを設立しました。循環器治療のなかでも、不整脈治療はやや特殊で専門性の高い分野です。残念ながら、その特殊性から、充分な医療を届けられていないのが実状です。南九州地域の不整脈で治療を必要としておられる患者様と対話し、地域の先生方と連携し、より高度で専門的な治療を提供していくことが当センターの使命だと考えています。

私は、これまで20年間、関西・東海・海外において、それぞれの地域を代表する不整脈センターで、診療に従事してきました。進歩し続ける不整脈治療を日本中、世界中に追いかけてきた経験を生かし、薬物治療はもちろんですが、スタッフとともに研鑽した至高の治療技術をもって、一人でも多くの笑顔を生み出す場所を作っていきます。

                                                                          不整脈センター長 佐藤大祐

活動・実績

症例数


2023年度
2022年度
2021年度
不整脈に対するカテーテル治療
(カテーテルアブレーション)
462350318
ペースメーカー件数
(リードレスペースメーカー含む)
176168110
┗ 内 除細動機能付き
ペースメーカ
(ICD、CRT-D、S-ICD)
31
13
25

[失ったものを取り戻す!若返りの心房細動治療]

アンチエイジングアブレーション ・ Anti-Aging Ablation (AAA)

心房細動は年齢とともに増加し、自然に治ることはほとんどなく、進行し続けてしまう病気です。年齢とともに増加する不整脈であるため、カテーテル治療をされる患者様は60歳代から80歳代の方が中心です。
人間、どうしても年には勝てないもので、年齢とともに不整脈も増えますが、同時に腎臓の機能も少しずつ落ちてしまいます。70歳代では3人に1人、80歳代では2人に1人の方は、自覚症状がなかったとしても腎臓病を抱えております。腎臓病も一度悪くなると、自然に治ることはなく、進行し続けてしまう病気です。
従来の心房細動に対するカテーテル治療(カテーテル・アブレーション)は、治療前・治療中・治療後のいずれの時期においても造影剤が必要でした。この造影剤は腎臓に負担をかけてしまう薬剤ですので、今まではある程度、腎臓を犠牲にしながら心房細動治療を行ってきたのが実情でした。
当院では最新の医療機器を駆使し、少しでも腎臓の機能が悪い方や造影剤に対してアレルギーがある方は、治療前・治療中・治療後のいずれの時期においても造影剤を一切使用しないアブレーション治療を行っています。この治療法は腎臓の機能を悪化させないだけではなく、心房細動を治療することによって心臓の機能はもちろんですが、腎臓の機能も治療前より改善することが証明されています。年齢とともに失った心臓と腎臓の機能を取り戻す、若返りの治療であります(アンチエイジングアブレーション・Anti-Aging Ablation)
造影剤を使用しない心房細動アブレーションは、国内のみならず海外学会・論文・書籍・映像作品など多分野で採用・取り上げられており、実際に国内・海外の多数の病院から見学に来ていただく、もしくは足を運んで指導を行ってきた実績があります。
少しでも腎臓や造影剤に不安をお持ちの患者様・医療機関関係者の方々は、いつでもお問い合わせ下さい。

術前のCT画像(造影剤未使用)

画像:術前のCT画像(造影剤未使用)

術中の超音波を利用した画像(造影剤未使用)

画像:術中の超音波を利用した画像(造影剤未使用)

(治療を受けられた方の御許可を頂き掲載しております)

天陽会 中央病院では心臓病の一つに分類される不整脈に対して、以下の治療および検査を専門的にご提供しております。

不整脈診療に必要な新しい知識と治療を適切に提供する目的で2012年度より日本不整脈学会・日本心電学会が合同で不整脈専門医制度の運用を開始しています。当科は日本不整脈学会・日本心電学会認定不整脈専門医が診療を担当している日本不整脈学会・日本心電学会認定不整脈専門医研修施設です。

不整脈のカテーテル治療

(カテーテルアブレーション=経皮的カテーテル心筋焼灼術・バルーンによるアブレーション術)

不整脈は健康に過ごされてきた方にも突然発症し生活の質を著しく低下させる病気です。治療技術の進歩により不整脈は根治できる病気の一つになりました。直径2〜3mm程度の細いカテーテルを心臓に設置し、不整脈の原因を診断し、不整脈の原因となっている部分を治療用カテーテルで焼灼(温める)ことにより不整脈を治療します。不整脈の種類によって治療する部分が異なり、治療に要する時間も異なります。

天陽会 中央病院では脈拍が速くなったり乱れたりする頻脈性不整脈に対して経皮的カテーテル心筋焼灼術で治療しています。また、心房細動に対してはバルーンによるアブレーションや薬剤による化学的アブレーション(ケミカルアブレーション)でも治療しています。

心房細動

心房細動は罹患される方が非常に多い不整脈です。脈拍が乱れたり、速く打つことで不快な症状の原因となります。しかしながら、半分の患者様では自覚症状がありません。自覚症状がなくても脳梗塞などの血栓塞栓症や心不全の原因となることから、適切な治療が必要な不整脈です。
当院ではその方の心房細動の状況に応じて、カテーテル治療(カテーテルアブレーション=経皮的カテーテル心筋焼灼術もしくはバルーンによるアブレーション)を行っており、心房細動を維持させる変化を示していると考えられている部分(Complex Fractionate Atrial Electrogram:CFAE)の焼灼、心房内の不整脈の通り道を遮断する線状焼灼、上大静脈隔離術等をオーダーメイドで追加しています。

しかしながら、カテーテルによる治療だけでは心房細動を治すことが困難な患者さんが一定数います。当院では心臓にあるマーシャル静脈という細い血管(静脈)に特殊な薬剤(無水エタノール)を注入する化学的なアブレーションを追加することによって従来のカテーテルアブレーションより有効な治療も行っています。


画像:不整脈のカテーテル治療
画像:不整脈のカテーテル治療
画像:不整脈のカテーテル治療

クライオバルーンによる冷凍アブレーション

画像:クライオバルーンによる冷凍アブレーション
画像:クライオバルーンによる冷凍アブレーション

マーシャル静脈に特殊な薬剤(無水エタノール)を注入する化学的アブレーション(ケミカルアブレーション)

心房粗動

高齢の方、心疾患がある方に多く見られる不整脈です。心房細動と同様に脳梗塞などの原因や心不全の原因となる可能性のある不整脈です。

発作性上室頻拍

健康な方にも見られる不整脈でWPW症候群はこの不整脈に含まれます。突然、140〜200回/分程度の頻脈になり、突然、正常な脈になるのが特徴です。

期外収縮(心室性期外収縮・上室性期外収縮)

健診などでよく指摘されることがあります。自覚症状が強い場合に治療の適応となります。期外収縮の数・起源によりカテーテル治療で根治可能な場合があります。

心室頻拍・心室細動

生命にかかわる不整脈です。心筋梗塞や心筋症と云った心臓病を持つ方にみられることが多い不整脈です。不整脈の起きている場所や原因を明らかにして治療を行います。基礎心疾患によっては内服治療・植え込み型除細動器が必要となります。

経皮的カテーテル左心耳閉鎖術

心房細動という不整脈によって血液の流れがよどんでしまうと、心臓の中に血の塊(血栓)が出来てしまうことがあります。血の塊(血栓)が脳に流れて行くと、脳梗塞を引き起こしてしまいます。心臓の中でも『左心耳』と呼ばれる部分は血栓が出来やすい場所で、脳梗塞の原因として非常に重要な場所になります。

経皮的カテーテル左心耳閉鎖術は足の付け根の血管(静脈)から細いカテーテルという管を使い、『左心耳』にフタをするような道具を留置します。フタをしてしまうことで『左心耳』の中に血の塊(血栓)が出来るのを防ぎ、脳梗塞を起こさないようにします。

画像:不整脈のカテーテル治療

ペースメーカー移植術

脈拍が遅くなることで、めまい・失神や心不全の原因となる不整脈に対してペースメーカ治療を行います。当院では新規のペースメーカ移植術は条件付きMRI対応ペースメーカを使用しています。またMRI対応ペースメーカ移植術後の方のMRI検査も実施しています。

リードレスペースメーカー

従来のペースメーカは、外科手術で皮膚を切開し、皮下ポケットを設けて装置を植え込み、静脈を通して、リードを心臓内に留置する必要がありました。それに対して、リードレスペースメーカは、本体を皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて心臓内に送り込み、小さなフックで直接心壁に取り付けます。リードレスペースメーカは、皮下ポケットもリードも不要なため、それらに関連した合併症のおそれがありません。また、外科手術による傷もなく、装置のふくらみもないため、装置を意識することなく生活できます。

画像:リードレスペースメーカ
画像:リードレスペースメーカ取り付けイメージ

植込み型除細動器移植術(ICD)およびペーシングによる心不全治療(CRT)

心臓突然死は、症状出現から1時間以内の心臓病を原因とする予期せぬ突然の自然死と定義されており、ほとんどの心臓突然死は心室細動と心室頻拍によるものです。 
当科では心臓突然死を未然に防ぐために、必要に応じて治療(植込み型除細動器:ICD)を行っています。また、心不全の方では心臓突然死の危険が高くなることもわかっており植込み型除細動器による心臓突然死の対応だけでなく、ペースメーカによる心不全治療(心臓再同期療法:CRT)も行っています。

皮下植え込み型除細動器(S-ICD)

わきの下に植込まれた本体と、皮下に留置されたリードを使って、電気ショックによる救命治療を行います。
このシステムは、本体とリードが心臓や血管に触れないため、植込みによる合併症の発生率が経静脈ICDシステムよりも少ないという利点があります。

画像:皮下植え込み型除細動器(S-ICD)
画像:皮下植え込み型除細動器(S-ICD)植え込みイメージ

原因不明の失神に対する精査

失神は突然、意識を失い大きな事故に至る可能性のある危険な状態です。失神を起こされた場合、現状では脳神経外科などを受診される方が多く、頭部のMRI やCT検査が行われています。一般には知られていませんが、心臓の病気が原因となって失神を起こすことが、かなりの頻度であることが報告されています。短期間に 行われる検査で失神の原因が明らかにならない場合、埋込型心電記録計(体内に設置する小さな心電図記録計)による長期間の観察を行うことで、心臓病を原因と する失神が明らかになり、適切な治療が選択できるようになってきました。
当院でも必要に応じて埋込型心電記録計による失神の精査を行っています。

(仮)

画像:埋込型心電記録計

画像提供:

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
日本メドトロニック株式会社
ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

(順不同)

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