人工膝関節置換術

【人工関節置換術】


一般的な原則として60歳以上の方、他に有効な治療法がない場合に行います。関節リウマチや変形や痛みが非常に強く、生活が困難な場合には年齢が若くても行うことがあります。なかでも、変形性膝関節症や関節リウマチなどにより傷んで変形した膝関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術を人工膝関節置換術といいます。

術前検査を行い、特別な全身の問題がなければ、すべての年齢の方に適用できます。


●人工膝関節部分置換術U K A


部分置換術は、膝関節の傷んでいる部分だけを人工関節に置き換える手術です。多くの人は最初に内側の軟骨がすり減って痛みが出ます。徐々に進行し、関節の片側の軟骨のみがすり減っている場合や、変形性膝関節症の中期~末期の方が対象になります。

                手術前        手術後

●人工膝関節全置換術(T K A


関節の痛みや変形がさらに進行している場合は、TKAの適用となります。TKAは関節の痛みの原因となっているすべての部分を取り除くため、他の治療法と比べると「痛みを取る」効果が大きいのが特徴です。また、人工関節自体の性能が以前と比べると格段に良くなっているため、その効果がさらに長く続くといわれています。そのため、日常の動作が楽になることが期待できます。

               手術前         手術後


⚫️人工膝関節置換術手術例(手術前・手術後の歩行)

両側TKA同時手術前の歩行

両側TKA同時手術後の歩行(3ヶ月経過

※患者さんに同意をいただいて掲載しております。


すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。

症状の改善には個人差があります。



●コンピューター支援を用いた手術


症例毎にCT画像より緻密な3次元モデルを構築し、コンピューター支援を用いて設置位置、骨切り量、骨切り位置を3次元的に設定して計画を立てます。

正確でより安全な手術によって患者さんの QOL(生活の質)向上が、期待されます。



⚫️高齢化に伴う介護予防・高齢者の QOL 向上に、更なる普及が期待される人工膝関節置換術 


人工膝関節置換術は、変形性関節症をはじめとする膝の痛みに対する治療のために行う手術です。関節の継続的な痛みは要介護状態になってしまうきっかけとなるため、高齢化社会では特に対策が重要視されています。

人工膝関節手術の件数は、年々増加傾向にあり、約10年間でおよそ2倍に増えています。しかしながら、国内での変形性膝関節症患者数は、自覚症状を有する患者数で1000万人、潜在的な患者数 (X線診断による患者数)で3000万人と推定されています。

手術による体への負担が減り、少しでも受けやすい手術へと進化していくことが、人工膝関節置換術の普及に繋がります。

肩関節外科


【人工骨頭置換術】


肩関節の上腕骨頭だけを入れ替えます。人工骨頭に入れ替えることで、痛みを取り除く効果が期待できます。

人工骨頭は金属やセラミックでできていて、患者さんの年齢や骨の形状、質によって、骨セメントを用いて固定する場合と骨セメントを使用せずに直接骨に固定する場合とがあります。

もともと痛みはあっても肩があがる方の場合、人工骨頭置換術でも可動域の改善が見込まれます。しかし、肩の痛みがあり腕があがらない方の場合、人工骨頭置換術で症状の改善の見込みは低いと思われます。

 

【TSA】


人工関節置換術は、イラストのような器具を、肩の肩甲骨と上腕骨に挿入します。
変形した上腕骨に金属のボール(ヘッド)と芯棒(ステム)を、肩甲骨にある関節窩にプラスチックの受け皿(グレノイドコンポーネント)を設置します。プラスチックの受け皿は一般的には骨セメントという接着剤で固定します。

人工関節

人工関節が上腕骨と肩甲骨にはいった 状態。ステムとヘッドは連結しています

プラスチックの受け皿(グレノイドコンポーネント)が肩甲骨関節窩に挿入された状態。(左)挿入前/(右)挿入後

正常な状態
上腕骨頭に丸みがあり、関節窩と上腕骨頭にすきまがあります。

手術前のレントゲン
上腕骨の変形が強い所見がみられます。上腕骨頭の丸みがなくなっています。

手術後のレントゲン
上腕骨の変形した骨頭を切除し、肩甲骨にもプラスチックの受け皿が入っています。

⚫️人工関節置換術後の予後


受け皿のプラスチックが数年で緩む、つまり肩甲骨からプラスチックがずれる・外れるために、痛みが再発することがあります。そのため、人工関節置換術の予後はあまりよくないと言われていました。

しかし、近年は医学の発展により、人工関節がよく施行されている国外施設(アメリカやフランスなど)では緩みの頻度は低くなってきていると報告されています。
日本では肩人工関節置換術後10年以上の治療成績の報告はなされていないため、どれくらい人工関節が長持ちするかは主治医と話をすることをおすすめします。


⚫️術後特有の合併症


①感染、化膿


人工関節は人体にとっては異物です。術早期からおこることもありますし、経過良好でも身体の免疫力が低下して、細菌が人工関節周囲に侵入して、化膿がおこることがあります。

肩が腫れる、熱が続く、突如として強い痛みが出る場合などは、感染がおこっている可能性があります。手術中に医師は感染予防のために抗生剤の点滴をしたり、術中に洗浄したりして、細菌がいつかないように努めます。しかし、感染はおこりうる合併症です。


②神経障害


人工関節置換術では器械を的確に設置するために、筋肉をよけ、関節の靭帯を切除します。そうした操作の際に腕の牽引などで一過性の神経障害(手のしびれ、数日は肘が曲げにくい)がおこる可能性があります。

人工関節の緩み

前述のとおり、人工関節は時間の経過とともに器械が緩んでくること(ぐらぐらと動く)があります。
これは、歯のインプラントや詰め物でもすり減ってくることと同じです。使うことで、器械は摩耗(すり減る)するためです。


③合併症への対策


「感染、化膿」「人工関節の緩み」に関しては、程度によって再手術が必要となる場合があります。

感染では、抗生剤の点滴や手術にて体内を洗浄します。しかし、それでも感染が収まらず、程度によっては一気に人工関節を抜去しなければならない場合があります。

人工関節が緩んだ場合、関節窩(肩甲骨の受け皿)はプラスチックの受け皿をいれたことで骨が少なくなっているため、受け皿を再度置換するのは非常に困難です。
そのために最終的には器械を入れ替えるにしても上腕骨に金属のボールと芯棒(ヘッドとステム)を再置換するだけになることが多いです。

再手術は非常に難しい手術のため、主治医の先生とよく相談する必要があります。


【RSA】


リバース型肩人工関節置換術(反転型人工関節置換術)

どうしても肩があがらない方への新しい治療方法

20144月から国内での使用が認可された、リバース型人工関節置換術が効果的という報告があります。このリバース型人工関節はヨーロッパでは1990年代から、アメリカでは2004年から使用が開始された方法です。

リバース型人工関節置換術(反転型人工関節置換術)はイラストのような器具を、肩の肩甲骨と上腕骨に挿入します。

変形した上腕骨にプラスチックの受け皿(ライナー)とステムを、肩甲骨の関節窩に金属のボール(グレノスフェア)とベースプレートを設置します。ベースプレートは金属のスクリューで固定します。

リバース型肩人工関節置換術

リバース型人工関節が上腕骨と肩甲骨にはいった状態。ステムとライナーは連結しています。

(左)挿入前の関節窩

(右)ベースプレートが肩甲骨関節窩に挿入された状態。

⚫️全人工肩関節置換術において、より正確な設置を目指しナビゲーションシステム を導入しています。

 

当院では正確な人工関節の設置のために、ナビゲーションシステムを用いた全人工肩関節置換術を行っています。

正確に人工関節を設置することは、手術の合併症を最小限に抑え、人工関節が長持ちすることにもつながります。

【関節鏡下手術】


手術創が小さく術後の回復も早いなどメリットが多く、高齢者でも負担が少ない手術方法です。45ヵ所ほどの孔から内視鏡や手術器具を挿入します


関節鏡下手術のメリットは?


○最小侵襲手術(創が小さい手術)なので、手術中の出血が微量

○最小侵襲手術なので、健康で問題のない筋肉組織まで傷つけない

○創が小さいので、手術後の創痕が目立たない

○装具による固定期間が短い

○術後の回復が早いので、リハビリの早期開始、早期退院、早期社会復帰が可能

○高齢者の方でも負担が少ない


【関節鏡下腱板修復術】

腱板断裂している肩

糸つきのビス(アンカー)を上腕骨に挿入し、その糸を腱にかける

糸を引っ張り、別のビス(アンカー)にその糸を通して、そのビスを上腕骨に挿入する。


【関節唇損傷】

関節鏡を用い、糸つきビスを使って治します。

損傷した関節唇

糸つきのビスを関節窩に入れ、糸を靭帯に通す。

糸を結んで修復した状態

【関節鏡下バンカート修復術・脱臼制動術】


1:関節唇靭帯複合体を完全に関節窩から剥がす関節唇靭帯複合体を完全に関節窩から剥離します。


ラスプという器械で剥がします。この剥がし方が、手術の成否をきめると言えます。

2:アンカーを関節窩に打ち込む


アンカーという糸つきのビスを関節窩に打ち込みます。
当院では骨性バンカートやコンタクトスポーツ選手に対して、アンカーの糸を1本増やして、2本の糸のついたアンカーを2本、ないし3本関節窩に打ち込んで剥がれた靭帯を修復します。(Dual suture法)
アンカーの先は骨の中にはいり、ひっかかりますので、糸を引っ張っても簡単には抜けない仕組みです。

アンカー(糸つきのビス)

アンカーを打ち込んだ状態のイラスト

関節窩にアンカーが2本入った状態

3:剥離した関節唇靭帯複合体を縫い合わせる


糸を関節唇、靭帯複合体に厚くかけ、剥離した関節唇靭帯複合体をもちあげあげながら、縫い合わせます。
関節鏡下ではsliding knotという縫い方でおこないます。

この症例は骨性バンカートの方で、骨に糸をとおす必要があるため、きり状の器械(スーチャーグラスパー)で骨をつきさしてから、糸を骨にとおします。

靭帯をもちあげながら、糸を縫合

糸を骨にとおす

縫合した状態